学会発表抄録
7.[展示]第13回JCOA学会(日本臨床整形外科医会)                  平成12年

矢追インパクト療法(YIT) 円背矯正

東京渋谷区 山脇診療所 山脇 昂

 考えてみれば、立位より仰臥位になれば重力による円背は自然に矯正されている。楽になる。胸郭内臓器の上下圧縮 その他の歪は除かれ呼吸も楽になり、心電図上不整脈は消え、胸痛等も楽になるのはこの為と思われる。MRIやCTにしても、それは仰臥位で撮るものであり、立位という<ダイナミズム>を反映していない。胸部X-Pや写真はそれを反映する。お年寄りの円背は仰臥位になっても改善しない時は、高い枕で調整するか、横臥位で寝る。重力による<顎下垂>加わっている方もいる。これらの事は<老化性筋無力>あるいは<老化性筋弱力>が<主>であり、椎骨の変形は<従>だと思います。
【方法】今まで両前腕に行っていた「矢追インパクト療法(YIT)」を、立位で円背あり、かつ腰も曲がって後彎を呈している方々に、腹臥位をとらせ腰部また背中に背骨を中心に左右対称にこの皮内注射を6個行う。また膝・肩等 腫痛している局部にも行う。
【結果】お年寄りにこの方法を行い、診察台から降りるとすぐ、曲がった腰を<よいしょ>と伸ばす仕草をし、伸びる人もいる。円背は伸びないが、伸ばす仕草はする。その後呼吸がまず楽になり 腰が暖かく、体が軽くなり、歩行が楽、 階段の昇降が楽になり、腰に打つ方が良いと言う。就寝後4〜5回排尿に起きたのが1回になったと喜ぶ人もいます。 2週間毎にこの療法を繰り返すのですから、改善して行くのではないかと思います。インパクト開始直前の写真は撮っていないのですが、3〜4年この療法を続けている方で、以前は自分でも<猫背>だったと言う人が、今はほぼ[垂直]と言ったほうが良いお年寄りが数人います。
 又お年寄りではない 腰痛に悩む人にも何人か行いましたが、注射の<沁みる>ような痛さは、次第に暖かさに変わり、経験上判るのですが、波動のように表面(表皮)上を伝わって行きます。1週間位持続し、2週間毎に数回繰り返すと、腰痛も軽減して行くようです。又疼痛・腫脹・発赤のため動きにくくなった関節周囲に6個やってみました。これも結果は良いようです。副作用ではないか?痒くなってだめだ、と又両前腕に戻す人も勿論います。
【結語】アレルギー治療に主として行われているこの療法は、猫背・曲がった腰に行っても、腫痛する関節等局所的療法としても役に立ちます。姿勢を立て直すように思います。 局部効果もありました。現在まで考えられている「減感作療法」更には「免疫学的療法」を大きく上回る療法だと考えます。整形外科で最も重要視されなければならない物理的歪の矯正そのものが起こるように思います。そしてそれは 心の歪(ストレス)を同時に救えるように思います。 以上 体験的治療を発表しました。
(1) 矢追 博美著 矢追インパクト療法と21世紀の医療、矢追 博美、鼻の病気よ、さようなら、 第1版、東京:桐書房、1995年:226〜236
(2) 宮本 昭正、治療 監修 国立相模原病院院長 宮本昭正、アレルゲン、TORII&CO.、LTD.1994年;19〜31
(3) 宮本 昭正、治療 監修 東京大学名誉教授 日本臨床アレルギー研究所所長 宮本昭正、鳥居薬局「アレルゲンエキスによる診断と治療」、TORII PHARM. CO.、LTD.2000年4月作成;17〜31

減感作療法との差異点

減感作・脱感作を指導している「監修 国立相模原病院院長 宮本 昭正、アレルゲンTORII&CO.、LTD.1994年」を参考としつつ、且つ其の内容と 矢追インパクト療法 の主な差異点

宮本 減・脱感作療法

1) ハウスダストの稀釈
力価が失われるから、アレルゲンエキス 対照液 「トリヰ」 2mL・9mLを使用する。

2) アレルゲン 猫毛 エキス「トリヰ」
診断用 に使用する。

3) アレルゲン スクラッチエキス「トリイ」 ダニ
診断用 に使用する。

4) 複数注射する人もいる。皮内注射は痛いから皮下に注射する。

5) 作用は抗イデオタイプ抗体の産生とサプレッサT細胞と共に アレルギー状態を、減感作により回復する可能性も考えられる。

6) 診断とは、局所の発赤反応の大小を指す。同時に起こっている全身反応に付いては何も書いていない。

7) 右記の事は何も書かれていない。

8) 右記の事は考えられていない。

矢追インパクト療法

1)ハウスダストの稀釈
力価を問わない迄 超極微稀釈するため、アレルゲン治療エキス「トリイ」 稀釈液 2mL・9mLを使用する。

2)超極微稀釈し、治療のため皮内注射する。

3)超極微稀釈し、治療のため皮内注射する。

4)6個別々に 皮内注射する。6個の内容は別に記す。

5)人為的惹炎症 神経軸策反射の利用 6個使用による累積・相乗・増幅効果を見る。

6)局所反応と同時に起こっている全身反応を見る。この全身反応を利用する。

7)全身の僅かな燃焼上昇作用を利用する。

8)6)、7)から考えられることは糖尿病に運動療法として作用する。


参考:イディオタイプ
 同一クラスの免疫グロブリンのなかにも、クラスに共通な構造の他に、サブクラスによって(subclass)それぞれ固有の抗原構造を持っている、IgG1〜4のサブクラスが存在する。 特定の群に属する人しか持っていない抗原特異性をアロタイプ(allotype)といい、特定の分子のみに見られるものをイディオタイプ(ideotype)という。
 アロタイプは遺伝因子の支配を受け、InVなどがこれに属する。
 イディオタイプとは、抗体活性を持った個々の免疫グロブリンがおのおの保有している独自な抗原性による型である。このイディオタイプに対して特異的に産生された抗体が抗イディオタイプ抗体であり、該当するイディオタイプをもつIg産生細胞に直接に、もしくはサプレッサ−T細胞を介して働いて、この抗体産生反応を制御するわけである。この抗体は抗原特異的に主としてIgE抗体を制御できることが報告されており、また抗原と同様に細胞表面の抗原レセプターを架橋できるので、いわゆる"持続的抗体産生細胞"をも不活化できる可能性がある。だが、その臨床応用の報告はまだない。