学会発表抄録
14.第16回保団連医療研究集会                       

矢追インパクト療法(YIT)

開業医  山脇 昂

最初に言わせていただきたいことは、保団連医療研究集会の「開催の目的と意義」に
(1)目的
・現代医療・医学の進歩を第一線にふさわしく研究し、発展させる
・医学の第一線にふさわしい創造的分野の探求と構築
と言うのがあり、私の行なっている療法は、全くこの目的と一致します。
しかしこの目的と、保険医療機関・保険医・青本という制限制約(城壁の中)での行動のみでは、発展性は制限され所謂護送船団内での行動であり、合致しません。この城壁(或いは船)の中での医療行為のみでは(1)は起り得ないと考えます。城壁の外に出たり、又入ったりし、戦い、学び、取り入れ、新しい創造的分野の探求と構築こそが大切だと思います。時には保険医療機関・保険医・青本を超え、逸脱し、ヴァイオレイト(犯す・破る)する瀬戸際こそ、新しい芽吹きの始まりだと思います。インフォームドコンセントとは患者さんと医師の対峙というぎりぎりの線から生じ、又混合診療もこのぎりぎりの対峙から生じると考えます。利用者にとって満足度の高い医療サービスをできる限り低いコストで提供できるようになると思います。21世紀医療は病名主義という枠(束縛)を外さなければいけないと思います。症状そのものを治す、又はホリスティック医療が確立されねばなりません。人間全体丸ごとを対象とする医療が保険に導入される必要があります。

現在脱感作或いは減感作療法はPROPHYLACTIC INOKULATION AGAINST HAY FEVER(L.NOON:Lancet,1,1572,19111) )とFreeman2)に書かれている以上には一歩も進んでいません。実に90年以上変わっていません。この論文が科学をある一定方向に規定したと考えます。ここが見直しされなければならない原点なのではないでしょうか。つまり〈1種抗原エキス〉を〈漸次高濃度〉3) 8)〈皮下注射〉し〈耐久力をつける〉ことです。日本で脱感作減感作を指導している書は、鳥居薬品から出ている宮本 昭正先生監修の本4)です。日本の保険医療に点数化されているのはこの療法です。これに対し私が行なっている矢追インパクト療法は〈5種抗原エキス+パスパート〉〈超微稀釈〉〈皮内注射〉〈耐久力もつけられ、効果も応用疾病範囲も格段に広くなる〉YAHoo!で山脇診療所を検索して見てください。尚パスパート(R)皮内注射液(Paspat(R)intracutaneous injection アレルギー性疾患治療剤多種アンチゲン混合物・塩酸エフェドリンmixture of various antigens・ephedrine hydrochloride )は薬価収載1965年11月ですが、今後遺伝子治療時代にも、もっと治療に応用さるべき薬だと思うのですが、ドイツでの製造(日本の会社が作っている)は打ち切られているらしいです。残念です。その〔薬効薬理9〕〕はすばらしいです。パスパート皮内注射とは見方によれば遺伝子治療の端緒だと考えます。ベクターも要りません。この事をほとんどの御医者さん達は理解しないか、看過している。ただ痛い皮内注射だと考えられている。更に加えれば、皮内注射という技術は皮下注射、筋肉内注射、静脈内注射等に比べ技術熟練を要します。その事は青本では全く無視され一緒くたです。

矢追博美先生は、過って岩手県立中央病院呼吸器科在職中1984年開業されてからずっとアレルゲンをもっともっと稀釈して行って超微稀釈し皮内注射するともっと効果的であることを研究発表等してまいりました5)。皮内反応である発赤は、同様に起こります。
この発赤は何を意味しているのでしょうか?BCGの場合直径9mm以下は陰性とか、それ以上は陽性とか、アレルゲンの皮内テストでもこの基準が使用されます6)
私はこの部分を全く別に解釈します。[1]〈皮内注射は沁みるように痛み〉が広がって行きます。沁みるように広がって行くとは、表面(表皮と粘膜面)を広がって行くことです。閑かさや岩に沁みいる蝉の声(芭蕉)を思い出させます。
それは表皮と続く粘膜面を恰も静かな水面にぽっと1個の小さな石ころを投げ入れた時に生じ広がって行く[2]水紋(波動)と同じ現象と考えます。目に見える発赤部分にのみ気を取られていて、陽性陰性を判断しません。本当は[3]外(表皮)内なる外(粘膜面)すべてに伝わっている。そして伝わるというのは[4]〈エネルギー消費〉そのものです。従って[1][5]〈暖かさ〉に変わります。6個皮内注射するとすぐ体が暖かくなります。
Ragweedのエキス一種或いはハウスダスト(HD)1種皮内注射し、漸次高濃度に移行し、耐久力をつけるのがL.NOONから踏襲されている方法ですが、この中には私が考えている[1][2][3][4][5]は一切考えられていません。1個では[5]暖かさに変わることに気付かなかったのでしょう。その後IgG1〜4のことが流行のように研究され7)、保険点数にも採用されていたようですが、消えました。科学がいかに儚いかを物語る1例だと思います。
私は超微稀釈したアレルゲン5種+パスパートを別々に0.025〜0.05ccなるべく体の左右対称に皮内注射します。壷等は全く考えていません。
例えば背中中央線の左右に遣りますと、[1]が起こり[5]にすぐ変わります。血色顔色が良好に変化します。恰も入浴直後のような血色の良い状態になり、数日継続します。[4]が起こったのです。本人に聞いても{何だかわからない}という人と{温かくなった}という人それぞれです。目の前が明るくなり物が良く見えるようになったとも患者さんは言います。[4]が起こるということは、インシュリンを注射したわけではありませんから、体の中で何が燃えるかと言えば、糖ではなく、その後も継続して燃え続けるものは何か?中性脂肪(TG)です。TGの燃焼は、命を燃やしつづける「生命の火」そのものです。1回遣ると約2週間影響あります。その間3〜4日目に疲労感襲ってきます。5〜6日目で回復します。即ち運動と同じ効果をもたらします。腸蠕動運動も増し、空腹感も沸いてきます。運動など全く出来ない寝たきりの人にも遣れます。約2週間毎に注射行ないます。この燃焼が起これば次第に曲がっていった背中を少しでも元に戻し立直せるということです。下垂した眼瞼を元に戻す機序も同じです。糖尿病の人に遣っていると、血糖・HbA1cが後で下がって来る人、下がらない人ありますが、TGは下がり、時にはHbA1cとTGの関係は乖離します。QOLは向上します。糖尿病の患者さん15症例1〜2回でこの療法から離脱していった症例から6年間継続されている症例まで、長くなりますが、紙面が許せば後に提示させていただきます。肥満は内臓脂肪・皮下脂肪の蓄積ですが、この燃焼に最も優れている方法だと思います。
整形外科:関節を疼痛・腫脹・発赤のため動かさないと起こる局所肥満にも対処できます。関節炎・腱鞘炎・腰痛等とか、小児麻痺による変形にも、対処できるのでは、と思います。疼痛で動かさないため局所に堆積し、変形をもたらせた中性脂肪(TG)を取り除いてやれば良いのです。そうすると本来ある可動性が少し戻ってきます。そのことが大切なのです。少し可動性がつけば、動かすことにより、合目的的でなく、無駄に蓄積張り巡されたTGは次第に消失して行きます。形はダイナミズムを取り戻します。

この療法は、皮内テスト6個遣っているだけです。それが即治療になっている。
(皮内)テスト=反応=治療=副作用=人体実験=予防見事にこの等式を具現しています。 局所の発赤の程度:これには関心を持ちません。シール張ってしまいます。

私が希望する事は、この療法を興味あるDr.諸氏に実際見ていただきたいことです。札幌近郊で9月23日(日)私の発表前後何方か御自分の診療所又は病院で、御自分の患者さんに、インフォームドコンセントを得ることが出来、担当医も患者さんも試してみたいという御希望があり一致すれば、そこへ行って遣らせていただきます。詳細は電話でもE‐mailででも承ります。一緒に御見学される医師の方もどうぞ。こういう方法こそ、科学的とかEBMとかに勝るとも劣らない、3者共納得の得られる客観的実証的実地医療だと考えます。その後もお声を掛けてくだされば、遣らせていただきます。

減感作・脱感作を指導している「監修国立相模原病院院長 宮本 昭正、アレルゲンTORII&CO LTD.1994年」を参考としつつ、且つ其の内容と矢追インパクト療法の
主な差異点
宮本 減・脱感作療法 矢追インパクト療法
1)ハウスダストの稀釈
力価が失われるから、アレルゲンエキス 対照液 「トリヰ」 1.8mL・9mLを使用する。

2)アレルゲン猫毛エキス「トリヰ」
診断用に使用する。

3)アレルゲンスクラッチエキス「トリイ」ダニ診断用に使用する。

4)複数注射する人もいる。皮内注射は痛いから皮下に注射する。

5)作用は抗イデオタイプ抗体*の産生とサプレッサT細胞と共にアレルギー状態を、減感作により回復する可能性も考えられる。

6)診断とは、局所の発赤反応の大小を指す。同時に起こっている全身反応に付いては何も書いていない。

7)右記の事は何も書かれていない。

8)右記の事は考えられていない。

9)右記の事は考えられていない。

1)ハウスダストの稀釈
力価を問わない迄超極微稀釈するため、アレルゲン治療エキス「トリイ」稀釈液 1.8mL・9mLを使用する。

2)超極微稀釈し、治療のため皮内注射する。

3)超極微稀釈し、治療のため皮内注射する。

4)6個別々に皮内注射する。6個の内容は別に記す。

5)人為的惹炎症神経軸策反射の利用6個使用による累積・相乗・増幅効果を見る。

6)局所反応と同時に起こっている全身反応を見る。この全身反応を利用する。

7)全身の僅かな燃焼上昇作用を利用する。

8) 6),7),から考えられることは糖尿病に運動療法として作用する。

9) 6),7),8)から考えられる事は、中性脂肪(TG)を燃焼させる。

*イディオタイプ
同一クラスの免疫グロブリンのなかにも、クラスに共通な構造の他に、サブクラスによって(subclass)それぞれ固有の抗原構造を持っている、IgG1〜4のサブクラスが存在する。
特定の群に属する人しか持っていない抗原特異性をアロタイプ(allotype)といい、
特定の分子のみに見られるものをイディオタイプ(ideotype)という。
イディオタイプとは、抗体活性を持った個々の免疫グロブリンがおのおの保有している独自な抗原性による型である。このイディオタイプに対して特異的に産生された抗体が抗イディオタイプ抗体であり、該当するイディオタイプをもつIg産生細胞に直接に、もしくはサプレッサーT細胞を介して働いて、この抗体産生反応を制御するわけである。この抗体は抗原特異的に主としてIgE抗体を制御できることが報告されており、また抗原と同様に細胞表面の抗原レセプターを架橋できるので、いわゆる''持続的抗体産生細胞''をも不活化できる可能性がある。だが、その臨床応用の報告はまだない8)

参考文献
1)Noon,L.: Lancet,1,1572,1911
2)Freeman,J.:Further observations on the treatment of hay fever by hypodermic inoculations of pollen vaccine.Lancet U:814,1911
3)Norman,P.S.,Lichtenstein,W.L,&Lichtenstein,L.M.:Immunotherapy of hay fever with ragweed AntigenE.Comparisons with pollen extract and placebos.J.Allergy 42:93,1981
4)宮本 昭正、治療 監修 国立相模原病院院長 宮本昭正、アレルゲン、TORII&CO.、LTD.1994年;19〜31
4)' 宮本 昭正、治療 監修 東京大学名誉教授 日本臨床アレルギー研究所所長 宮本昭正、鳥居薬品「アレルゲンエキスによる診断と治療」、TORII PHARM.CO.,LTD.2000年4月作成;17〜31
5)矢追 博美著 矢追インパクト療法と21世紀の医療、矢追 博美、鼻の病気よ、さようなら、第1版、東京:桐書房、1995年:226〜236
6) 石崎達:アレルギー,10(5),307,1961.
7)Takemasa Nakagawa and Alain L.De Weck:CLIN REV ALLERG 1983;1:197‐206
8)中川 武正:Prog.Med. 3:701〜708,1983.
9)
1.アレルギー性疾患において増加傾向にある血中好酸球を減少させる。(ヒト)
  榊原英夫、小林文子:小児科臨床,15(12),1305(1962)

2.アセチルコリン/アドレナリン皮内反応比を正常化させ、自律神経系の調節作用を有する。(ヒト)
  宮尾定信、袴田八朗:診療,9(4),331(1956)

3.副腎皮質機能の改善により、尿中17‐ケトステロイド゙を正常域に回復させる。(ヒト)
Rosenbaum,M.:Munch.Med.Wschr.,97(39),1278(1955)

4.肝、腎、脾の細網線維の増殖を示し、細網内皮系への刺激作用を有する。(マウス)
Missmahl,H.P.:Klin.Wschr.,36(1),29(1958)

5.塩酸エフェドリンは局所の毛細血管を収縮させ、多種アンチゲンの拡散を抑制する。(ラット)
玉井敏夫、西川 均:基礎と臨床,18(5),2057(1984)

以上 1.2.3.4.5.〔文献請求先〕
マ ル ホ 株 式 会 社    医薬情報部
〒531‐0071 大阪市北区中津1丁目5番22号
TEL:06‐6371‐8898 FAX:06‐6371‐8220